会社設立時の法務チェックリスト|弁護士・司法書士に相談すべき場面
会社設立と法務の関係
会社を設立する際、多くの方がまず考えるのは事業計画や資金調達でしょう。しかし、法務面の準備が不十分なまま設立を進めてしまうと、後から思わぬトラブルに発展することがあります。
港区や渋谷区はスタートアップやIT企業が多く集まる地域として知られており、毎年多くの会社が設立されています。会社設立の手続き自体は、オンラインサービスを利用して自分で行うことも可能ですが、法務面のチェックが十分でないまま進めてしまうケースも見受けられます。
本記事では、会社設立時に確認すべき法務事項をチェックリスト形式で整理し、弁護士や司法書士に相談すべき場面について解説します。
会社設立前に決めるべき法務事項
会社の種類の選択
日本で設立できる会社の種類は主に以下の4つです。
- 株式会社:最も一般的な会社形態。社会的信用度が高く、資金調達の選択肢が広い
- 合同会社(LLC):設立費用が株式会社より低く、経営の自由度が高い。近年、設立件数が増加傾向にある
- 合名会社:社員全員が無限責任を負う。実務上、新規設立は少ない
- 合資会社:無限責任社員と有限責任社員で構成される。こちらも新規設立は少ない
多くのケースでは株式会社か合同会社が選択されますが、事業の内容や将来の資金調達計画、取引先からの見え方などを考慮して判断する必要があります。
商号(会社名)の決定
商号を決める際には、以下の法的な制約を確認してください。
- 株式会社であれば「株式会社」を商号に含める必要がある(合同会社も同様)
- 他社の商号と類似していないかを確認する(同一住所で同一商号は登記不可)
- 商標権を侵害していないかを調査する
- 使用できない文字や記号の制限を確認する
特に商標の問題は見落とされがちです。商号を決めた後に、他社がすでにその名称で商標登録をしていた場合、商号の使用差止めや損害賠償を請求される可能性があります。特許庁のJ-PlatPatで商標検索を行い、事前に確認しておくことをおすすめします。
事業目的の設定
定款に記載する事業目的は、会社が行う事業の範囲を定めるものです。将来的に展開する可能性のある事業も含めて記載しておくのが一般的です。
ただし、事業目的の記載が適切でないと、以下のような問題が生じることがあります。
- 許認可の申請時に事業目的が不十分と指摘される
- 銀行口座の開設時に事業内容の説明を求められる
- 取引先から事業目的の記載内容について確認を受ける
事業目的の書き方には一定のルールがあるため、不安がある場合は司法書士や弁護士に相談してみてください。
※ 個々の状況により結果は異なります
定款作成の法務チェックリスト
定款は会社の基本ルールを定める重要な書類です。以下の事項を確認しながら作成しましょう。
記載が必須の事項(絶対的記載事項)
- 商号
- 事業目的
- 本店の所在地
- 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
- 発起人の氏名・名称および住所
記載しておくべき事項(相対的記載事項・任意的記載事項)
- 株式の譲渡制限:中小企業では株式の譲渡に取締役会(または株主総会)の承認を必要とする旨の規定を設けるのが一般的です
- 取締役の任期:株式会社の取締役の任期は原則2年ですが、非公開会社では最長10年まで延長可能です
- 事業年度:決算月をいつにするかを定めます。設立時期に応じて、最初の事業年度ができるだけ長くなるように設定するのが一般的です
- 株主総会の招集手続き:簡略化の規定を設けておくと、運営がスムーズになります
- 役員報酬の決定方法:定款で定めるか、株主総会の決議で定めるかを規定します
定款認証と設立登記
株式会社の場合、定款は公証人の認証を受ける必要があります(合同会社は不要)。認証手数料は資本金の額に応じて3万円〜5万円です。定款認証後、法務局で設立登記を行います。登録免許税は、株式会社が最低15万円、合同会社が最低6万円です。
許認可に関するチェックリスト
事業の種類によっては、営業を開始する前に行政機関の許認可が必要です。許認可が必要な事業の一例は以下のとおりです。
- 飲食業:食品衛生法に基づく営業許可
- 建設業:建設業の許可(一定規模以上の工事を行う場合)
- 不動産業:宅地建物取引業の免許
- 人材派遣業:労働者派遣事業の許可
- 酒類販売:酒類販売業免許
- 古物商:古物営業の許可
許認可の取得には、事業目的の記載内容、事務所の要件、資格者の配置、資本金の額など、さまざまな要件があります。設立後に許認可が取得できないことが判明すると事業開始が遅れてしまうため、設立前の段階で要件を確認しておくことが重要です。
出資・株主に関するチェックリスト
出資比率の設計
複数人で会社を設立する場合、出資比率(持株比率)は経営権に直結する重要な問題です。
- 過半数(50%超):株主総会の普通決議を単独で可決できる
- 3分の2以上(約66.7%):定款変更や合併などの特別決議を単独で可決できる
- 100%:完全な支配権を持つ
出資比率は設立後に変更するのが難しいため、設立段階で慎重に設計する必要があります。特に、共同創業者間で均等に分けるケース(50:50)は、意思決定のデッドロックが生じるリスクがあるため注意が必要です。
株主間契約の検討
共同で会社を設立する場合、株主間契約(創業者間契約)を結んでおくことが望ましいケースがあります。特に、一方の創業者が途中で退職した場合の株式の取扱い(いわゆるベスティング条項)や、競業避止義務などを取り決めておくことで、将来のトラブルを予防できる可能性があります。
弁護士・司法書士に相談すべき場面
司法書士に相談すべき場面
- 定款の作成や設立登記の手続き
- 商号調査や事業目的の記載方法
- 役員変更や増資など、設立後の登記手続き
設立登記の手続きは司法書士の専門分野です。オンラインサービスを使って自分で行うことも可能ですが、設立後の変更登記なども見据えて、信頼できる司法書士と関係を築いておくと安心です。
弁護士に相談すべき場面
- 株主間契約や創業者間契約の作成
- 出資比率の設計と経営権の確保
- 許認可に関する法的要件の確認
- 取引先との契約書の作成・チェック
- 知的財産(商標、特許など)の保護
- 利用規約やプライバシーポリシーの作成
特に、複数人で会社を設立する場合や、許認可が必要な事業を行う場合は、弁護士への相談を検討してください。渋谷区や港区にはスタートアップ支援に力を入れている法律事務所も多く、起業に関する初回無料相談を実施しているところもあります。
設立後に対応すべき法務事項
会社設立後も、以下の法務事項に対応する必要があります。
- 税務届出:法人設立届出書、青色申告の承認申請書などの提出
- 社会保険の手続き:健康保険・厚生年金保険の加入手続き
- 労働保険の手続き:従業員を雇用する場合、労災保険・雇用保険の手続き
- 契約書の整備:取引基本契約書、秘密保持契約書、業務委託契約書の作成
- 利用規約・プライバシーポリシー:ウェブサービスを提供する場合は必須
設立直後は事業を軌道に乗せることに注力しがちですが、法務面の対応を後回しにすると、後からまとめて対処しなければならなくなります。設立と同時期に、最低限必要な法務事項を整えておくことをおすすめします。
まとめ
会社設立は、法務面の準備が事業の安定した運営に直結します。定款の作成、許認可の確認、出資比率の設計など、検討すべき法務事項は多岐にわたります。
自分で対応できる部分もありますが、株主間契約の作成や許認可の要件確認など、専門的な判断が必要な場面では、弁護士や司法書士に相談することで、将来のトラブルを未然に防げる可能性が高まります。設立前の準備段階から専門家を活用し、法的な基盤をしっかり整えたうえで事業をスタートしてください。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律的なアドバイスを提供するものではありません。具体的なお悩みについては、弁護士等の専門家にご相談ください。